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株式会社カスミ様

カスミ様Fig1


株式会社カスミ様は、北関東を中心に約160店舗を展開する食品スーパーマーケット・チェーン。2013年より、中期経営計画に「ソーシャルシフトの経営」を掲げ、全社の経営改革を推進中です。「ソーシャルシフトの経営」の目標は、「100年続くカスミの礎を築く」こと。今回は、改革の推進部門である「ソーシャルメディアコミュニケーション研究会」の髙橋マネジャーにお話を伺いました。



ソーシャルシフトが始まったきっかけを教えて下さい

2011年、ある社内会議の中で弊社取締役会長の小浜(以下、会長)が、ソーシャルシフトという本との出会いについて次のように話していました。
「これからのスーパーというのはマーケットが縮小して行く中で、いかに競合と相対して行くのかを考えないといけない。そのために必要なお客様の声を、我々はこれまで聞けていなかった。震災直後、各店が自主自立で店舗を立て直し、運営をやっていけたではないか。きっと我々には(本に書かれていたようなことが)できるはずだ。」

カスミ様Fig2

ソーシャルメディアコミュニケーション研究会 髙橋マネージャー

 常々、会長が将来のカスミの姿を描くことに腐心されており、この時は、「方向性を見出されたのかな?」といった感想をもちました。この時は、まさか自分が担当することになるとは思ってもいませんでした。暫くのち、当時所属していた部署の上司から呼び出され「ソーシャルシフトを会社としてすすめて行くことになりました。あなたが(高橋さんが)責任者として決まりましたよ」と突然言われ、まさに晴天の霹靂。当時は経営企画部で中期経営計画や広報戦略などを考える立場にいました。全く異なる業務に取りかかることになり戸惑ったことを覚えています。

内示を受けたのち、会長に挨拶に行った際には、「正直言って私は典型的なアナログ人間なので、知らない部分がとても多いです・・・」と正直に話をしました。そこで会長に「アナログだからいいんや」と言われて、救われたような気がしました。


ソーシャルシフトを推進している組織と、メンバーについて教えて下さい

「ソーシャルメディアコミュニケーション研究会」は、カスミ社内のソーシャルシフトを推進させるための専任組織として、2012年春に発足しました。当初、私を含めて3名の体制でスタートしました。

経営企画部出身の私に加え、システム部署出身の大里さん(男性)、店舗次長(カスミ社で言う副店長)の高倉さん(女性)です。最初は、役割分担も決まっておらず、みんな何も分からない状況の中でした。まずは、プロジェクト発足のきっかけとなった、斉藤さんの著書「ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと」を一生懸命読みました。

そして、今後どのような活動をしていくべきか、考えるにあたり、一刻も早くループスさんとお会いしたいと思っていました。何せ、道がないものを作っていくのですから、真摯にループスさんのお力をお借りしようというスタンスで臨んでいました。当初は、「カスミのソーシャルシフト」の設計をループスさんと進めながら、推進計画そのものをしっかり理解していくという状況でした。

約1年間の準備・社内啓蒙期間を経て、2013年からの中期経営計画において弊社は「ソーシャルシフトの経営」を掲げました。
2013年より、ソーシャルシフトの経営を現場で展開すべく、ソーシャルシフトの実践店舗をつくりました。これらの店舗は、販売部長の配下組織から外れ、販売本部長直轄の店舗として、従来販売部長が行っていた意思決定を店長自身が自律的に行います。公募により、第一期「ソーシャルシフト店舗」10店舗がスタートしました。(※当初は実験の意味も込めて「ソーシャルシフトモデル店舗」と呼んでいました)

また、経営理念を核に、従業員が実践しやすい行動指針としての「カスミの価値観」の策定を開始しました。従業員の中から選抜した20名の「未来委員会」メンバーと、約1年に及ぶディスカッションとワークショップを経て、価値観を完成させました。ソーシャルシフト実践店舗は、2014年3月からスタートする第二期ソーシャルシフト店鋪の公募で一気に増え、現在では58店鋪になりました。

現在、「ソーシャルメディアコミュニケーション研究会」は8名になりました。私、大里さん、高倉さんの3名に加え、お店のソーシャルシフトの活動のフォローに販売部長(カスミ社で言うエリア責任者)や次長経験者含む3名の社員(男性)、価値観を策定した未来委員会のメンバーから2名(女性)が参画しました。未来委員会から当部署に参画してもらった女性二人には、価値観の社内浸透活動に尽力してもらっています。新たに入ったメンバーについては、ソーシャルシフトの考えに近い志向を持っている方々だったので、非常に心強く思っています。

カスミ様Fig3
ソーシャルメディアコミュニケーション研究会のメンバー


進めるにあたって、苦労した事、不安だった事はありますか

意外と、苦労というのは忘れてしまうものなんですよね(笑)
敢えて難しさというところで言うならば、完成していないものについて、ゴールがどこまでで、それは何なのかと考えて悶々することがあります。

ソーシャルシフトの改革は、ここ50年以上あったチェーンストア理論(中央集権型の管理統制型組織)を変えることです。それを僅か数年の取り組みで、従業員全員に受け入れてもらうことは、難しい。カスミにとってのソーシャルシフトの必要性を、会長がソーシャルシフトの経営に踏み切った想いも重ねて、丁寧に伝えていくように務めていますが、伝えることは簡単ではありません。現場レベルの話で言えば、新しい取り組みに露骨に拒否反応を示されることもありました。

もともと、ソーシャルシフトの取り組みはカスミの企業理念と離れているものではありません。企業理念に立ち返れば、理解を得やすい活動です。しかし、社内では企業理念や経営方針の理解・浸透が希薄になっていたかも知れません。そんな時に、いきなりそこに立ち返るような施策は、受け入れられ難かったのかもしれません。実際従業員から、「こんなに仕事が忙しいのに、ソーシャルシフトなんて余計な仕事をやる気にはなれない」といった意見をされることも少なくありませんでした。


改革の手応えは感じていますか

プロジェクトを開始してから約3年になります。当初否定的だった現場も、随分受け入れてくれるようになりました。これまで、ソーシャルシフト店舗を中心に色々取り組みが行われてきました。ソーシャルシフト店舗は、10店舗から58店舗に、そして来年度には100店舗以上に拡大する見込みです。また、ソーシャルシフト店舗の活動内容は、Facebookグループ「SS店舗グループ」にてみなさん紹介しあっています。「SS店舗グループ」には、店舗の店長、次長、チーフ等の役職者だけでなく、パートナー(パートタイマー)さんも参加しています。本部側からも会長・社長を始め管理職者やバイヤーも参加し、いまでは参加者人数は1000人を超えています。(2014年11月20日現在1,052人が参加)

毎日、10件〜20件の投稿が寄せられ、投稿のコメント欄では活発に意見交換がされています。日々、現場のパートナーさん達が取り組んだ、お店での施策がたくさん投稿されてきます。それを見ていると、現場でパートナーさん発のアイディアが多数生まれていることが解ります。例えば、弊社の食品スーパー業態の一つ「フードスクエア」の越谷ツインシティ店では、「個食」(1人分からの小さな主食・おかず)にフォーカスした企画「ハッピーカップデイ」が生まれました。

新しいチャレンジの実現には、本部各部門と現場とのこれまでにない折衝が多々ありましたが、現場の熱意あって実現することができました。良い企画については、他の店舗でもトライすること(カスミでは「まねる化」と呼んでいます)も珍しくありません

カスミ様Fig4
Facebook グループ 「SS店舗グループ」の投稿例

「SS店舗グループ」が活性しているポイントだと感じていることがあります。それは一つ一つの投稿に返答する会長、そして弊社代表取締役社長の藤田(以下、社長)のコメントなのです。現場のパートナーさんにとっては「会長・社長に褒めてもらえた」というのは大きな喜びとなります。
社長は1投稿も漏らさず、背景まで読み込みながら一つずつコメントを入れています。私自身、そこに社長の強い信念を感じます。


ソーシャルシフトの改革が始まって、社内へはどんな影響がありましたか

従業員のつながりが可視化され、関係性が強化されたことを感じます。当初は情報の共有に心理的ハードルがあったかも知れませんが、今はグループへの投稿を楽しみながらやっているのが伝わって来ます。

「SS店舗グループ」で積極的に投稿してくれている女性パートナーさんを集めて、これまでに2回オフ会を開いています。参加者の皆さんはとにかくポジティブ。圧倒されます。オフ会ではお店の運営や自店の取り組みについて活発に話し合われ、素晴らしい意見が多く出ています。
社長は、このような強くポジティブなエネルギー持っている人たちを「強者」と表現します。そしてオフ会の後の感想として、「強者は強者と仕事をしたがるものだ」と話されました。まさにそのとおりだなと思いましたね。みんなが会のあと「SS店舗グループ」でどんどん友だちになっていくのです。そのとき、女性のネットワーク力(つながり力)の強さを感じました。

また、「誰と誰がつながっているか」分かると、従業員さん個人のグループへの関与に変化が出て来ます。つながりは、これまであまり積極的に関らなかった人たちも巻き込んでいくような雰囲気がつくれるのです。

例えば、今年のハロウィン時期には60店舗が自店の取り組み内容を投稿してきました。とても、グループの盛り上がりを感じました。また、そういったイベントに、一部ではなく、店舗スタッフ全員で取り組んだ企画はしっかり数字(売上)にも表れて来ていると感じます。

また、ここは、「カスミの価値観」を顧みる機会でもあります。「カスミの価値観」は、未来委員会を中心に1年かけて作り上げてきました。しかし振り返ってみれば、現場にはもともと価値観のような考え方で行動している人がいるのです。グループでの情報共有を通じて、そういう人たちをバックアップするような環境ができてきていると感じます。

従業員が仕事を楽しむことで、お客様にもそれは伝わり、楽しく買い物をしてくれます。価値観に沿った行動がお客様の喜びにつながると、私は思っています。


本部側の進捗はどうですか

本部側はやはり後追いになってしまうところがありますね。お店側は、目に見える成果や接点があるので、ソーシャルシフトを楽しみながらどんどん進んで行くのですが、本部には、お客様の反応が直接届く場面も少なく、活動の成果を実感できていないと感じます。しかし、少しづつではありますが、動き出している部署や人材も出てきています、理解はこれから進んでいくと思います。


ソーシャルシフトの経営の目標は、「100年つづくカスミの礎を築く」ことです。そうなったカスミはどんな企業になっていると思いますか?

国内にそういったスーパーはなかなか無いと思いますので、回答としては難しいですね。
非常に抽象的になってしまうのですが、敢えていうならば、

「カスミさんてやっぱりいいよね」と言って下さる方が地域に多く出て来て、従業員さんが「カスミで働いて本当に良かった」と働く喜びを感じて、お客様と相互にワクワクドキドキする。そして、日々のコミュニケーションの中から、新しい商品やサービスを生み出すことが日常になっている。

そういう企業になれは100年続くのではないかと思っています。

会長がよく言っている言葉があります。

「つながる力」

これは地域も従業員さんもそうですが、地域とカスミ、従業員さんとカスミがどれだけ太いパイプでつながっていくか。
そのためにはカスミをもっと知ってもらう必要がありますし、その努力も必要だと感じています


最後に、ループスに対する要望があれば教えてください

私は、斉藤さんはじめループスのみなさんの個々の能力やソーシャルシフトの考え方を拠り所に、この改革の道筋を一緒に切り拓いています。また組織として学ぶ部分も多く投げかけて頂いていると思います。プロジェクト開始時に当時の上司からは、「ループスさんの意見が8割、残りの2割は現場の意見」によってプロジェクトを進めるように言われました。私はそのバランスを常に意識するようにしています。

しかしながら、「ソーシャルシフトの経営」を実践している企業の前例はありません。加えて、事業環境は常に変化してゆきます。当然、シナリオ通りに行きません。様々な葛藤の中、一緒に「うーーーーーん」と悩んで、試行錯誤を繰り返しながら活動をすすめていることに大変感謝しております。到達点が見えていない中、ループスさんには、常にこの先の道を照らしていただき、お互い悩みながら前に進み、一緒にゴールに辿り着きたいですね。

カスミ様Fig1

カスミ ソーシャルメディアコミュニケーション研究会メンバー 髙橋 徹 様、大里 光廣 様、渡辺 雅美 様、河野 智 様、高田 一夫 様、高倉 綾子 様、持丸 美鈴 様、宮本 裕香里 様

ループス プロジェクトメンバー 齋藤 徹、福田 浩至、岡村 健右、伊藤 友里、加藤 たけし

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ループス・コミュニケーションズ (looops communications)