ポスタス株式会社様

ポスタス株式会社様

スタートアップ成長期の組織の壁。 「関係の質の改善」から「成功循環モデル」を目指す

幸せ視点で新たな経営を学ぶオンラインスクール「hintゼミ。そのカリキュラムを個別の企業向けにカスタマイズしたのが「hintゼミ+(プラス)」です。今回は、その事例紹介として「hintゼミ+」を導入し、社員同士の学び合いを進めているポスタス代表取締役社長の本田興一氏にインタビュー。成長著しいスタートアップが抱える組織の課題と解決策としての「hintゼミ+」導入、その成果と今後の展望について伺いました。

事業の急成長に伴い、組織が疲弊する現実

──2022年4月から「hintゼミを社内向けにアレンジした「hintゼミ+」を、経営層からマネージャークラスが受講しているのがポスタスです。まずはポスタスという会社について教えていただけますか?

本田様:飲食店や小売業、理美容業向けにクラウド型モバイルPOSシステムを提供するのがポスタスです。我々のサービスを導入することで、POS機能はもちろん、オペレーションの改善と店舗の経営改善につながるデータの利活用が可能となります。

この事業はもともとパーソル系列の社内ベンチャーとして、2013年にスタート。2019年にポスタスとして独立しました。社内ベンチャーなので、スタートアップにとって最大の課題である資金面はサポートが安定しており、事業に集中できるのがメリットです。一方で、その分「結果を出さなくてはいけない」というプレッシャーも大きくあります。その点では、独立系スタートアップと同じです。

そういう意味で、社内ベンチャーではありますが、独立系スタートアップと同じマインドを大事にしながら、全力で事業の成長を追いかけてきました。

──スタートから9年。事業を急成長させてきたポスタスですが、これまでにさまざまな壁があったと思います。特に組織運営という視点では、どんな課題を感じてきたのでしょうか。

本田様:スタートアップでは、1-3-5-10の「成長の壁」があると言われています。まさにポスタスも教科書通りに(苦笑)、1年目、3年目、5年目、10億、30億、50億で壁にぶつかってきました。事業が大きくなって、人が増えるに従って、どうしても組織が疲弊していきます。2023年は10年目の節目ですが、それに向けてまた新たな組織のコンディションの課題を感じていました。

自分の責任範囲に終始する内向き組織からの脱却

──それは具体的にどのような課題だったのでしょう。

本田様:事業拡大に伴い、事業の機能は分化していきます。気がつくと、そこにセクショナリズムが生じていることに非常に危機感を感じていまいた。ポスタスには営業、開発、カスタマーサービス、バックという4つの機能があり、お客様の業態によっても業務内容が違ってきます。プロダクトごとにも、サービスの前工程と後工程で組織が分かれております。

このように組織が細分化すると、ひとりの人間が把握できること、できないことが、どうしても出てきてしまいます。さらにクオーターごとにプロダクトがバージョンアップするので、その複雑さは日々増していくことになります。

そういう状況では、わからないことがあったり、課題が生じても、真面目な社員は「まずは自分の役割を全うしよう」というのが先に立ってしまう。悪意なく自分の担当外のことには、進んで踏み込まなくなってしまうんです。結果的に、組織間の連携が足りず、お客様にご迷惑をかけてしまうケースが生じることも出てきました。

事業が成長しメンバーが増え、組織が細分化するのは、成長過程では必然です。しかし、そこで自分の責任範囲にだけ目が向き、悪意のない内向きな空気が蔓延してしまうのは問題です。「お客様に徹底的に寄り添う」という、我々にとって最も大切なことがいつのまにか薄れていってしまう。

この「悪意のない内向きな組織」をどう変えていけばいいのか。私にとっては、大きな悩みでした。

解決するには、能力の高い人材を投入し、その人物を中心に組織を構築し直すという方法もありますが、今の私達にとって、それは解決策にはなりずらいと考えました。

ポスタスが目指す組織は、そういう一人のスーパーマンに頼るものではなく、事業への熱い思いを持つメンバーが一丸となり、よりよい組織をつくっていくというもの。それこそが我々のパワーを最大化できるはずだ。そんな「総合力」のある会社にポスタスを育てていきたいという強い思いがありました。

それに必要なのは、「組織開発」です。頭の中に、いつもこのキーワードが浮かんでいました。

成功循環モデルに共感。企業内hintゼミを直談判

──「組織開発」を模索していた本田さんが、「hintゼミ」に出合ったのはどのような経緯だったのでしょう。

本田様:斉藤徹さんの『だから僕たちは、組織をかえていける』(通称:だかぼく)を読んだのがきっかけです。読んですぐに、「これはすごくいいな」と。「ポスタスの組織開発にぴったりの理論がわかりやすく解説されているぞ」と感じました。特にしっくりきたのが「成功循環モデル」の話です。

関係の質を変えることで思考の質、行動の質を変える。この3つの質を循環させることで、やさしい組織をつくるというのは、セクショナリズムから横の組織への思いが至らずにいる今のポスタスにぴったりでした。

横のつながりを深め、お互いが認め合う。ギブ&テイクではなく、ギブ&ギブのマインド──。お互いのベクトルを向き合わせることが、いいアウトプットにつながるという考え方に非常に共感しました。

──『だかぼく』に共感し、すぐに企業内ゼミ「hintゼミ+」の導入を思いついたんですか?

本田様:斉藤さんについて調べたところ、「hintゼミ」の存在を知りました。この「hintゼミ」をポスタスに適応させたコンテンツとして埋め込めたら、組織開発が大きく進むはずだと直感的に思ったんです。さっそく斉藤さんに直接メールをして、直接お会いすることになりました。それが2022年2月のことです。

──最初から「hintゼミ」の企業版を想定して、相談されたということですね。

本田様:「hintゼミ」は業種も規模もバラバラな企業の方々が一同に集まり、シーズンごとに3ヵ月間学ぶものです。そこに社員を1名、2名送り込むよりは、どうせやるなら経営、マネージャークラス全員が受講できるようにしたかった。社員同士のグループワークをすることで、自社の課題により具体的に落とし込んで、業務の実践につなげられると考えました。

斉藤さんからは、「個別カスタム」で対応できるとOKをもらえたので、さっそく4月から社内向けの「hintゼミ+」をスタートすることにしました。

「hintゼミ+」導入は、会社の危機感を伝えることに

──経営トップである本田さんの強い意志で導入を決めた「hintゼミ+」ですが、最初の社内の反応はいかがでしたか?

本田様:本田 経営メンバー10人については、まず『だかぼく』の本を配るところから始めました。僕は、毎月、自分のおすすめ本を経営メンバーに紹介して配っているんですが、『だかぼく』もその中の1冊として配ったんです。そのときに『だかぼく』や「hintゼミ」のことも説明して、「hintゼミ+」をやってみたいと話したところ、反応は上々でしたね。料金もリーズナブルだったので、すぐに試してみようということになりました。

その後、全社でも「hintゼミ+」導入をアナウンスしました。社内の反応は「へえ〜〜」という感じだったように思います。そもそも組織開発というのは、これをしたら急にガラっと変わるというものではありません。それでも、「hintゼミ+」の取り組みは、会社が今の組織のあり方に危機感を感じていること、その解決を真剣に考えていることを伝えるには十分だったと思います。

自社に置き換えて議論し、具体的なアクションへ

──具体的にどのように「hintゼミ+」の導入を進めたのでしょうか?

本田様:研修でのインプットも大事ですが、研修をしたからといって、それがそのままアウトプットできるとは限りません。アウトプットをするには、しっかり腹落ちをさせて実践を繰り返すしかないんです。「hintゼミ+」にはインプットだけでなく、アウトプットができるところまでを期待していました。

まずは4月から3カ月間10回1クールで、経営メンバー9名が経営クラスを、マネージャー16名がリーダークラスを受講。2期目の7―9月では、マネージャー、アシスタントマネージャーの17名がリーダークラスに参加しました。10月からは、アシスタントマネージャーや一般社員のメンバーにも対象を拡大。1年間で社員の3割が受講する予定です。

──般向けの「hintゼミ」とは、コンテンツに違いがあるのでしょうか?

本田様:1期(4−6月期)は、「hintゼミ」のカリキュラムをそのまま転用し、hintゼミ卒業生にファシリテーターとして参加してもらいました。2期(7−9月期)からは、ファシリテーターとして、1期の受講メンバーが参加。こうすることで、より主体的な学びが深まることになりました。

カリキュラムでは事前に動画やテキストをインプットして、週1回、ゼミに集まったメンバーがグループワークでディスカッションをします。議論をするときは、できるだけ自分たちのチームに置き換えることで、具体的な業務へのアクションにつなげるようにしました。「hintゼミ+」での学びをどのように生かすかは、自分たち次第だという意識でやっています。

──実際に受講した社員の方々からは、どんな感想が寄せられていますか?

本田様:「すごく腹落ちする」「わかりやすくて、非常にいいコンテンツだ」という声は、全員に共通する声ですね。事前に動画を見て議論に望むので、有効に時間を使えて中身が濃いという感想も聞きます。

3カ月のうち中間発表、最終発表と、それぞれが発表をするタイミングがあるのもいいですね。それまでの学びを自分なりに整理する機会になりますし、ほかの人の発表から気づきを得ることも多いです。特に中間発表の前後では、「hintゼミ+」での学びや議論を自分のチームに持ち帰って自分ごと化。関係の質を変化させようと具体的な実践を心がけているメンバーも多くいました。

今はまだマネージャークラスが受講生の中心ですが、弊社のボリュームゾーンであるアシスタントマネージャーやメンバーにも、「hintゼミ+」に興味を示している社員が多くいます。今後は彼らにも受講の機会を増やしていくことになると思います。

より自社に必要な学びへとアップデートを重ねる

──2期6カ月に渡る「hintゼミ+」で、すでに33名が受講しています。何か社内の変化を感じることはありますか?

本田様:組織そのものが変わるには、2、3年はかかるだろうと覚悟しています。まだ「ここが大きく変わった」という段階ではありませんが、ポジティブな変化のきざしは感じています。

わかりやすいことでいうと、メンバーの口にする言葉が確実に変わってきていますね。例えば、ちょっとした会話の中に「推論のはしご」や「ジョナサン」(※)といった、hintゼミでもよく使われているキーワードが飛び交っています。

(※)
推論のはしご…現実世界の中で自分が見たいものを選択・観察・解釈して仮説を作り、結論を出す思考のプロセス。推論のはしごを駆け上るのではなく、ゆっくりと登る習慣を身につけることで、「話し合えばきっと理解できる」というメンタルモデルとなり、解決策を共創する行動ができるようになる。

ジョナサン…ニューサウスウェールズ大学ウィル・フェルブス准教授が行った「腐ったリンゴの実験」では。チームに悪影響を与えるメンバーが生産性に与える影響を測定。そのとき、指示も鼓舞もしないで小さなメッセージを送り続けたジョナサンの存在が、チームの心理的安全性を再構築した。

組織間のコミュニケーションでは以前より壁がなくなり、相手に聞く耳を持つようになったり、意見を言いやすい雰囲気が生まれています。あとは社員の主体性を感じる場面も増えましたね。

──「hintゼミ+」を今後はさらにアップデートしていくとのことですが、どのように進化させていこうと考えていますか。

本田様:コンテンツ自体は素晴らしいと感じていますが、週1回1時間半の講座の中で、どうしても動画を見た感想や考えを発表する時間のウエイトが多くなってしまう部分がありました。それはそれで必要なプロセスですが、次の段階として、「具体的にどうするか」を掘り下げるべきだと考えています。

そこでゼミでの学びを踏まえて「自分たちは何をしたらいいのか」「どういう順番で何をすべきか」を議論する場を、「hintゼミ+」とは別に社内独自で行っています。

クオーターごとに1泊2日の経営合宿を実施。「hintゼミ+」に参加したメンバーで、「お客様のために。社員のために」という視点で、議論を深堀りしていきます。

同時に、「hintゼミ+」でも議論のウエイトを高める方向にアップデート。2期の後半からは、日々の業務やチームづくりに引きつけて議論する時間を意識的に増やしています。

──最後に、今後のポスタスの組織づくりにおいて「hintゼミ+」に期待することをぜひ教えてください。

本田様:「hintゼミ+」では、さまざまな経験や知見のほかに、他社事例の学びを得られることも大きな収穫だと思っています。組織づくりで悩んでいるのは自分たちだけではないと、改めて励まされますし、同じような課題をどう捉えて動いていくかで、結果は大きく異なるはずだとも思っています。

「hintゼミ+」での学びを、ポジティブに課題に向き合い、さらなる成長を目指す意欲へとつなげていきたいですね。

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