損害保険ジャパン株式会社様
22,000の社員を抱える大企業の リーダーが学ぶ「自走する組織」のマネジメント
幸せ視点で経営を学ぶオンライン・コミュニティスクールhintゼミ。hintゼミで行うカリキュラムを企業向けにカスタマイズしたのが「hintゼミ+」です。
今回紹介する導入事例は、従業員約22,000人を抱える日本を代表する大企業、損保ジャパン。損保ジャパンでは、組織改革の柱のひとつとして、リーダー層の学びとして「hintゼミ+」を自社向けにアレンジしたプログラム「SJ-NLD(損保ジャパンNew Leadership Discovery)」を2022年9月よりスタート。2023年秋までに、参加者は540名を超える予定です。
「SJ-NLD」を実現するために奔走したのが人事部人材開発グループのみなさんです。今回は、4人のメンバーに組織が抱えていた課題から、なぜ組織改革に乗り出したのか、SJ-NLDで目指す会社の姿や参加者たちの反応などを前後編で詳しく伺いました。
写真左から
◯損害保険ジャパン株式会社人事部人材開発グループ 北浦笙子さん
◯損害保険ジャパン株式会社ン人事部人材開発グループ 主任 永田典子さん
◯損害保険ジャパン株式会社 人事部人材開発グループ 課長代理 松嵜恵子さん
◯損害保険ジャパン株式会社 人事部人材開発グループ グループリーダー 髙田剛毅さん
◯損害保険ジャパン株式会社人事部人材開発グループ 課長代理 山縣麻由さん
奇跡的な偶然が重なったhint導入への動き
──損保ジャパンでは、リーダークラスの希望者向けに「SJ-SJ-NLD」(「hint+」の損保ジャパン社内プロジェクト)を2022年9月からスタート。2023年度秋までに全4期を開催し、延べ540 人が参加することになっています。人事部人材開発グループの松嵜さんも、その1年前に「hintゼミ」を個人的に受講していたそうですね。
松嵜様 私が最初に「hintゼミ」で学んだのは、2021 年秋のイノベーションクラスでした。
最初は、自分の個人的な勉強のための参加でした。一方で、私は会社でマネジメントクラスの育成を担当していますが、学ぶうちに「これは損保ジャパンの人材育成に取り入れたらよいのではないか」と思うようになっていました。
ちょうど2021年12月、新社長として白川が2022年4月から就任することが発表されました。白川の経営方針のひとつが「新しい組織づくり」で、人事部としてもそれに向けた準備がスタートしました。
白川から人事部に組織づくりの参考にしてほしいと紹介された本がいくつかあって、その中にhintゼミを主宰する斎藤徹さんの『だから僕たちは組織を変えていける』(以下、『だかぼく』)がありました。
──それは驚くほどの偶然ですね。
松嵜様 本当に奇跡的にいろいろなタイミングが重なって。それで、さっそく社内提案用にhintを社内プログラムとして実施する企画をまとめました。
新社長就任で一気に進む組織改革の流れ
──松嵜さんからの提案を上司である髙田さんはどのように見ていたのでしょう
髙田様 人事部では白川新社長からの「人材育成の抜本的見直し」というオーダーに応えるべく正式就任前から準備が進められました。
新体制で人材育成の新しい方針をつくるにあたり、「そもそも人材育成とは?」「今の損保ジャパンが抱える課題とは?」という問いを社長にぶつけていく中で、出てきた回答のひとつが『だかぼく』でした。白川からは、「自分の理想は『だかぼく』で書かれている世界だ」と。
そのときはまだ理解が足りていませんでしたが、今、振り返ってみると社長は『だかぼく』を通して “変化を起こす組織”を目指してほしいというメッセージを伝えたかったのだと思います。そして、その鍵となるのがリーダーだと。
──髙田さん自身は『だかぼく』に対して、どのような感想を持たれましたか。
髙田様 損保ジャパンでは2019年から1on1の対話を軸にしたマネージメントスタイルを追求してきました。対話重視の『だかぼく』の世界観には納得できたというのが正直な感想です。
ただ、現実としては、1on1がきちんと行われていない、もしくは単なる仕事の進捗報告で終わってしまっているなどの課題もありました。ですから、それらの課題を解決するヒントが『だかぼく』にあるのではないか、という期待もありましたね。
そういうことに向き合う中で、人事部として「リーダーにマネジメントのインプットをするサポートをこれまでしてきただろうか」という反省にも気づかされました。
社内導入前に「hint」のリーダークラスを体験
──実際に「SJ-NLD」をスタートする前、高田さんと松嵜さんは「hintゼミ」のリーダークラスに参加していますが、これはプログラムの内容を体験して確かめることが目的ですか。
髙田様 はい、その通りです。hintのプログラムを導入しようという検討する中で、松嵜さんから「せっかくだから『hintゼミ』を受けてみませんか?」と誘ってもらったのがきっかけです。私自身、リーダーとして抱える課題に向き合うチャンスでもあると思い、参加を決めました。
松嵜様 社内で行う前に、まずは運営側となる私たちが内容をきちんと理解しておくには、「hintゼミ」に参加するのが一番だと考えました。
「hintゼミ」については、幸せ視点の組織づくりを体系的に学べる点が素晴らしいと感じました。リーダークラスの中で学ぶ価値観やキーワードが、社内の日常会話で普通に登場するようにしたいと思いました。
リーダークラスでは、このプログラムを損保ジャパンに取り入れるなら、どうすれば共感してもらえるだろうと考えながら参加。どんな切り口なら気づきを与えられるのか、リーダーがこのプログラムで学ぶことで会社がどうかわっていくのか。そんなことをイメージするようにしていました。
統率型の企業文化からの脱却という課題
──損保ジャパンには「抜本的な人材育成の改革が必要」という危機感があったということですが、具体的にどのような課題があったのでしょう。
髙田様 未来の予測がしにくいVUCAの時代、今後、我々はディスラプトされる側になるかもしれないという危機感があります。だからこそ、常に変化を起こすことで、ディスラプトする側に転じていくことを考えていかなくてはなりません。
実際、コロナ禍の影響もあり、事業モデルも働き方も大きく変化しました。そして、その変化のスピードも加速しています。生き残るためには、この変化をどう先取りしていくかが重要です。
一方で、少し前まで損保ジャパンは「コマンドコントロール」といって、強力な統率型の組織でした。上からの指示をやり抜く能力の高さこそが企業文化だという時代もありました。
しかし、VUCA時代はそれでは変化に対応できません。社員が自ら考えて主体的に動き、自分たちでゴールを設定して変化を起こしていく。それができることが持続的な成長をもたらし、この先ビジネスにおける勝ちにつながっていきます。
そうなると、当然、組織そのものも、マネジメントも変わらざるを得ないのです。
自ら学ぶ意義を伝えることで周囲も賛同
──「NDL」導入にあたっては、社内調整も必要だったと思います。周囲の反応はどうだったのでしょうか。
髙田様 もちろん、すぐに全員が大賛成ということではなくて、プレゼンや説得を何度も繰り返す場面がありました。
例えば、hintゼミでは「やさしい組織」というキーワードがあります。しかし、この「やさしい組織」は、ともすると「ゆるい組織」というイメージにつながりやすいところがあります。そこに疑問を抱いた役員から、「本当にこのプログラムで人が育つのか?」という声があがったこともありました。「お金と時間を投資して、それに見合う効果があるのか?」という疑問にも答えていかなくてはいけませんでしたね。
──具体的にどのように説得をされたのですか。
髙田様 そもそも「学びとは何か」ということから議論を重ねました。これまでの経験から、識者から講義を聞いて、その知見に納得することが「学び」だという感覚が社内にはありました。
しかし、我々が導入しようとしていた「SJ-NLD」では、各自で動画を見て学んで、そのうえで、オンライン上で集まってディスカッションすることで、気づきを得ることで学んでいきます。この仕組で学ぶことの重要性をていねいに説明することで、会社側にも納得してもらうことができました。
松嵜様 「会社が変わらなくては!」という課題認識は共通してあるので、共感して応援してくれる人も多くいました。とはいえ、初年度の2期で、280人ものリーダーが参加するプログラムというはかなり大掛かりなプログラムであることに変わりはありません。それだけの人間がかかわることの是非や、予算の問題はありましたが、それでも比較的スムーズに進めることができたと思います。
髙田様 「SJ-NLD」はNew Leadership Discoveryの略。そのコンセプトは、それぞれが自分なりのリーダーシップを探求しながら確立していくことです。そんな世界観を航海に例えてプログラム名をつけています。
募集開始20分で1期80名の枠は満席に
──実際に「SJ-NLD」がスタートしたのは2022年9月です。プログラム開始に向け、具体的にどのような準備を進めたのでしょうか。
松嵜様 定員は1期が80名、2期が200名、応募期間は2週間としました。全国にリーダークラスは1,200名いますので、その約4分の1にあたります。実は私たちも、応募してくれる人がどの程度いるのかドキドキしていたというのが正直なところです。
ところが、ふたを開けてみると募集開始20分で1期の80名がいっぱいに、3日目には2期の枠も埋まってしまいました。慌てて募集ページをクローズするほどの大反響となりました。
北浦様 通常の社内プログラムで、こんなにすごい勢いで応募がくることはあまりないので、私たちも驚いてしましました。
髙田様 新しいプログラムだし、3カ月、毎週拘束されるのもハードルが高い。そのため、定員に届かない可能性も心配していましたが、我々の予想をはるかに越えて「学びたい」という人が多かったということです。
松嵜様 「SJ-NLD」では週1回、2時間のチームラーニングが全10回あるので、それだけで20時間です。さらに各自が個人で学ぶ動画が週1時間分あります。
対象となるリーダークラスは、10数名から多い人では70人ほどのメンバーを抱えていて、本当に忙しい人たちです。それでも自ら手を挙げて、学びたいという意欲を示してくれたのはうれしかったですね。
それだけ参加希望者が多かった理由としては、新体制発足とともに、会社として「変わらなくてはいけない」という強力なメッセージを発信していたというのがひとつ。そこに斎藤さんの講演会で背中を押されたという人が多かったのではないでしょうか。
髙田様 これだけ多くの方から手が挙がった時点で、いい意味で「期待を裏切られた」という感覚がありました。リーダー向けのこういったプログラムを「待ってました!」という声はうれしい誤算でした。