損害保険ジャパン株式会社様 その2

損害保険ジャパン株式会社様

自社向けにカスタマイズした対話でより実践的な学びを深める

幸せ視点で経営を学ぶオンライン・コミュニティスクール「hintゼミ」。「hintゼミ」で行うゼミ形式のカリキュラムを企業向けにカスタマイズしたのが「hintゼミ+」です。

 

新社長就任のもと、「人材育成の抜本的な見直し」を進めてきた損保ジャパン。その施策のひとつとして、リーダークラス向けに展開しているのが、「hint+」を損保ジャパン向けにアレンジした「SJ-NLD(損保ジャパンNew Leadership Discovery」(hint+の損保ジャパンオリジナル名称)です。2022年9月からスタートした「SJ-NLD」について、運営を担当する人事部人材開発グループのみなさんから、前編に引き続き詳しく伺っていきます。

写真左から
◯損害保険ジャパン株式会社人事部人材開発グループ 北浦笙子さん
◯損害保険ジャパン株式会社ン人事部人材開発グループ 主任 永田典子さん
◯損害保険ジャパン株式会社 人事部人材開発グループ 課長代理 松嵜恵子さん
◯損害保険ジャパン株式会社 人事部人材開発グループ グループリーダー 髙田剛毅さん
◯損害保険ジャパン株式会社人事部人材開発グループ 課長代理 山縣麻由さん

自社に合わせた質問で対話を深める設計に

──「SJ-NLD」の募集を開始してすぐに枠が埋まったという人気ぶりからも、リーダーたちの期待の高さが伺えます。具体的に「SJ-NLD」のプログラムではどのような点でカスタマイズをされているのでしょうか。

松嵜様 動画は「hintゼミ」と同じで、チームラーニングの設計をオリジナルにアレンジしました。チームラーニングでは、3つの質問で対話を行いますが、その設計を「損保ジャパンとしての観点」で話せるようにしています。

北浦 私は企画から運営を担当しました。企画ではループス・コミュニケーションズ(以下、ループス)から提案された内容を、より損保ジャパンにカスタマイズするにはどうすればいいのかを考えたり、運営では「学びのサポーター」と一緒にそれぞれのクラスに参加してサポートを担当したりしました。

 

松嵜 もうひとつの工夫としては、アンケートの実施です。学んだ内容が行動に反映できているか、また周囲がリーダーの変化をどう思っているかを、プログラムに参加する前と、終了後、そして3か月後にとったアンケートから分析しました。

 

山縣 アンケートの分析でもループスにかなり協力してもらいました。アンケートは参加者だけではなく、参加者に紐づく従業員にも実施。それによって職場がどのように変化したのか、その実態がより具体的に「見える化」したのが大きなポイントだったと思います

リーダー同士の悩みの共感や解決の場に

──実際に参加しているリーダーのみなさんの様子はどうだったのでしょう。

北浦様 2023年1〜3月期は、月〜金の毎日、朝と夕に各1クラス、全10クラスを開催しました。私は、そのうち朝に行われる5つのクラスのサポートを担当しました。チームラーニングでは、普段、見ることのないようなリーダーのみなさんがお互いの本心をさらけ出して、悩む姿を目にしたのがとても印象的でしたね。

誰かが「こんなことで困っている」というと、ほかの人が「実は僕も同じで…」と悩みを共有したり、「自分はこうやって乗り越えた」とアドバイスしたり。そこでリーダー同士の連帯感が生まれているのも感じられました。

──具体的な声として、どのようなものがありましたか。

髙田 「悩んでいるのは自分だけではないと気づかされた」「こういう場があってよかった」という声は非常に多かったですね。同じ悩みを持つ、同じポジションの人間が集まることで、共感や悩みの解決に役立つと感じてもらえたようです。

私たちとしては、50代のベテランのリーダーにとっては「いまさら」なのかな?と想像していたのですが、その層の満足度が100%などものすごく高かったんです。「今までの自分のやり方が違うことに気づけた」とか「10年前にこういうことを学びたかった」など、とても前向きに捉えてくれているのが、心強かったですね。

山縣 アンケートの回答を見ていても。参加者がどんどん変わっていく様子がよくわかりました。参加当初は自分なりのマネジメントは完成しているという自負から、「SJ-NLD」に対して懐疑的な人も、チームラーニングで対話を重ねるうちに、なんらかの新しい気づきを得られます。「今まで完璧だと思っていたけれど、もしかして時代に即していないのではないか?」とか「もっとできることがあるもではないか?」というふうに。

そうやって自分自身を客観的に見つめ直せたのは、非常によかったのではないでしょうか。

一方で、これまで長い間統制型でやってきた組織なので、急にすべてが自走する組織に変わるのは難しいし、ともするとバラバラになってしまうというリスクもあります。アンケートを見ていても、会社としてのまとまりと自走することのバランスをどう取っていくのかは今後の課題と捉えているのがよくわかりました。

 

永田 私は1期の最終回が非常に印象的でした。ある方は今回、学んだことで、自分からあいさつをしていないことに気づかれたのです。それで自分から変わろうと、通勤途中で出会う道行く人にもあいさつをするなど、具体的に行動を変えたそうです。ほかにも意識的に笑顔をつくるようになったという方もいました。そういうコメントを聞いていると、マネジメントスキルだけでなく、自身の人生そのものを見つめ直して、人として変わろうとしているということにとても感激して、号泣してしまいました。

リーダーの仮面をはずし、自分ごととして課題に向き合う

髙田 うちの会社のリーダーたちは、「リーダーとは完璧でカッコよくなくてはいけない」と思っているところがあります。いわゆる「リーダーの仮面」をかぶっているんですね。リーダーは孤独で、弱みを見せてはいけないという思い込みがありますそれが「SJ-NLD」で「リーダーだからといって無理をしなくてもいい。リーダーの仮面なんて外していいんだ」と学ぶことで、とても解放されたところがあると思います。

できない部分があって、弱みがあってもいい。そう思うことで楽になって、だからこそ自分から変わろうと思えるのだと感じます。

松嵜 「私が今まで行ってきたマネジメントの姿が、このクラスを受ける度に映し出されて、その度にこれまでの自分を全否定される気がする」とコメントする参加者もいました。同じように感じていた人も少なくなかったはずです。それでも、「今、自分が預かっているメンバーの将来、そして会社の将来を考えると、ここで学ぶことが必ず役に立つ」という思いで続けてくれたのだと思います。

そうやって最初はちょっと怖いくらいの真剣な顔で参加していた人たちが、だんだんにこやかな表情を変わり、最後には「結局、自分が変わらないといけないんだ」というコメントが並ぶようになります。みなさん、自分ごととして「NDL」のプログラムを捉えてくれていて、運営としては本当にうれしい限りです。

社外から参加する「学びのサポーター」の役割

──チームラーニングでは、「hint」から「学びのサポーター」としてファシリテーターが参加しましたが、その役割についてはいかがでしたか。

永田 「学びのサポーター」は、コンサルタントや研修講師の経験者の方が「hintゼミ」から参加してくれました。チームラーニングでは先生から学ぶのではなく、自分たちで対話の中から気づきを得ることを重視しています。「学びのサポーター」は、対話が行き詰まったときに適切な問いかけや事例を紹介してくれることで、気づきを深める役割を果たしてくれました。

実は、当初は、「学びのサポーター」を社内で内製化することを検討していました。しかし、現実的に日々の業務で忙しいリーダーがサポートに回るのは厳しいというのがあります。また、参加者からは「社外の方がファシリテーターでよかった」という声があるので、今後もこのスタイルで進めたいと思っています。

髙田 「学びのサポーター」は、社外の方だから本当に必要なときだけ手を差し伸べて、心理的安全性のある場を確保できたというのがあると思います。

──卒業生も「学びのサポーター」として活躍しているそうですが。

松嵜 2期をスタートするときに、1期の卒業生から「学びのサポーター」を募集し、94人中、15人が手を挙げてくれました。卒業生には、社内で実践して成功したことや失敗したことを先輩として共有してもらったり、もう一度チームラーニングで一緒に学ぶことで活性化してもらいたいと思っています。
「学びのサポーター」に手を挙げてくれた方は、「一度の学びでは消化しきれなかったので、復習の機会としても活用したい」とか「リーダーと対話できる場に参加することで同じ立場の人とのつながりを保ちたい」などの理由で協力を申し出てくれています。

1期目は自分が学ぶことで精一杯なので、2期目で「学びのサポーター」として参加することで、俯瞰して「SJ-NLDの学びを捉えたいという前向きな声もありました。

髙田 なかには副業感覚で、違う領域の新しいことへの挑戦を楽しんでくれている人もいます。そういう機会を我々人事部が提供できたのはよかったですね。

松嵜 社内の人が「学びのサポーター」だと、具体的なところで共感を得やすいのがメリットですね。従業員の「学びのサポーター」が増えることで、運営の輪もどんどん広がっていくと思います。

「無理をしない」ことを運営のポリシーに

──運用メンバーが一致団結して「SJ-NLD」をすばらしい社内プログラムとして実装し、結果を出しつつあることがお話からも伺えます。運用面では、何か課題になったことはありますか。

松嵜 プログラムの実施回数も参加者の数もかなり多いので、運営側の負担が重くなりすぎないようにすることを心がけましたね。細かい事務手続きもシンプルにして、運営として重要なことに時間や労力を割くような体制をつくりました。

 

北浦さんがスケジューリングや情報を連携する仕組みをかなりきっちりつくってくれたので、かなり助けられました。

 

北浦 ムダな作業をなるべく省いて効率的にできるように、頑張りました(笑)。

 

髙田 無理をするとどこかでひずみが生じて、走り続けることが難しくなってしまいます。「無理をしすぎない」とことを心がけることは、すごく大事なポイントだと思います。

 

松嵜 もともと「hintゼミ」というベースがあって、それを自社の実態や希望に合わせて調整するだけでいい「hintゼミ+」という仕組みは、そういう意味でも効率的な手段ですよね。

 

山縣 アンケートの運用では、量が膨大で分析も大変でしたが、ループスからていねいにフォローしてもらったので助かりました。

 

当初、アンケートは社内システムを利用していたのですが、それをさらに効率化するための新しいシステムを提案してもらって、それを走りながらつくりあげました。最初からきっちり決めるのではなく、やりながら相談して臨機応変に対応してもらえたのが、とてもよかったです。

 

松嵜 こういうのも「hintゼミ」のカルチャーそのものですよね。「疲れたら無理せず休もう」「完璧じゃなくてもいいから、走りながら考えればいい」。そんなhintゼミのカルチャーを運営でもどんどん取り入れていったということです。

影響の輪を広げて、繰り返し学べる環境を

──今後、さらに「SJ-NLD」の参加者が増えていくと思いますが、今後の展望としてはどのようなことを考えていますか。

松嵜 2023年度は秋までの2クールの実施が決まっていますが、できればもう1クール、全部で3クールを年度内に実施できればと思っています。

 

そこで「影響の輪」を広げるために、hintでも実施している「紹介による先行予約」も取り入れることにしました。通常は募集開始当日の9時に申し込みがスタートするのですが、卒業生からの紹介で1週間早く先行予約が可能になるというものです。1人1枠ですが、この仕組を利用することで、同じ志のある仲間が集まりやすくなると思います。

 

髙田 現在は手挙げ制でやっていますが、それは今後も同じだと思います。手が挙がらないということは、変わろうという意思がないということ。そういう人に無理に学びを与えても、結果は出ないでしょう。

それよりも自分から変わりたいと考えている人がいる限り、「SJ-NLD」を続けていけたらいいと考えています。

 

また、SJ-NLDの卒業生が安心して戻ってこられるネットワークの場づくりも検討していきたいですね。

 

SJ-NLD卒業生向けのコミュニティを作るということですか。

髙田 SJ-NLDでの学びを実践しようとやる気に満ちて職場に戻ってみたところ、そこではなかなかうまく実践できない壁にぶつかったりもしがちです。人事として、そういう悩みを抱えたリーダーたちが安心して戻ってきて、気持ちをさらけ出したり、勇気を取り戻せる場を作りたいと思っています。

そのためにも、体系的なマネジメントを「SJ-NLD」で学ぶと同時に、1on1での対話支援、個人と会社のパーパスを重ね合わせるプログラム、さらには評価制度なども含めて、点と点を有機的につないでいくことが大切になってきます。

あとはリーダーが学びを実践しやすい環境をつくるために、役員や支店長などの上の層からの理解もさらに深めてもらえるよう働きかけていくことも重要ですね。

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